疲れた顔

「大丈夫ばっかり言わないでよ」
と彼は言います。
それぞれが仕事をしているわけですし、仕事が楽なものではないと理解はし合っていると思います。
しかし、それを愚痴として話してしまえばせっかくの2人の時間を楽しめなくなってしまいますよね。
ですから、私としては彼と居る時間は楽しい話ばかりをしていたい・・・というのが考えだったのです。
彼がどんなに私に疲れているかと問いかけても私は、「大丈夫」だと答え続けていました。
実際、彼といると疲れが吹き飛ぶような感覚もありましたし時には疲れていると実感することもありましたが、それを口にしたくは無かったのです。
しかし彼からすると、それが寂しさに繋がっているようだったのです。
「変な言い方かもしれないけれど、疲れた顔を見せてくれても良いじゃないか」
というのです(笑)
私は思わず笑ってしまいました。
楽しい恋愛をしたいと思う場合、そうした顔ってあまり見たくないような気がするのですが。
きっと、私の全ての感情や表情を見たいからなんだろう。
そう思うと、本当に嬉しい気持ちになりましたし彼にはそんな姿を見せても良いかなとも思うようになりました。
それからは以前より、お互いに心の奥底まで見せ合うことが出来るようになりました。

微妙なバランス

「2人は付き合っているの?」
と聞かれれば、‘そうじゃないよ‘と答えますし
「じゃあ、普通の友達なの?」
と聞かれれば、‘それよりは少し仲が良いのかもしれない‘と答えていました。
彼と私は、仲良くなって長いこともありますしこれまで、かなりの頻度で会って来ましたのである意味、独特な関係でした。
恋愛感情があるのかどうかも、その頃の私はよく分からなくなっていたのです。
彼と私は、今からしてみると実に微妙なバランスで関係し続けてきたと思うのです。
付き合おうなんてやり取りは一切ありませんでしたがどちらかに「浮いた話」などがあるとヤキモチを妬くこともありました。
「そんな話、聞いてないよ!」
なんて膨れたりして(苦笑)
それでも、交際だとか恋愛だとかの話を持ち出さなかったのは其々の中に小さな恐怖心のようなものがあったからかもしれませんね。
微妙なバランスのまま進んで行った私たちの関係ですが次第に「今のままでは嫌だ」という気持ちになったのです。
そう、初めて彼との間に「我欲」というものが出てきたのです。
それから恋愛関係に進むまでには、そう時間はかかりませんでした。
自分の心のドアのようなものを開けば良いだけでしたから。
そしてやっと、私たちの長きに渡る微妙な関係に終止符が打たれたのです。

付き合っているうちに

「俺たち、本気で付き合わない?」
と彼に告白をされました。
‘本気で‘
というニュアンスが面白いと思ったかともいるでしょう。
私たちは仲良くしていましたし、冗談半分で「付き合おうか」「もう恋人と言っても良いよね」
なんて話をしていたのですがどちらかが、告白をするという事をしていなかったのです。
彼の言葉で1つの区切りが生まれ、私たちは交際をするようになりました。
関係性そのものに大きな変化はありませんしこのままの私で彼とは向き合って行きたいと考えていたのですが徐々に「もっと彼女らしく」なんて思うようになったのです(苦笑)
ある意味「看板」が変っただけなのに、心はこんなにも変っていくものなんだと痛感しました。
もっと彼女らしくと言う気持ちが私を焦らせましたし、彼にとって「心地よい存在」であることばかりを考えるようになりました。
それが不自然さを呼び寄せてしまったのです。
「今まで通りでいいのに」と彼は笑うのですが、どうにも気持ちが止まらないのです(苦笑)
それだけ彼を思っていると言う事なのでしょうが。
その気持ちが落ち着き始めたのは、暫くしてのこと。
「付き合っているうちに分かってくるんだろう」という構えが出来たときでした。

不自然

「久しぶりに会えたね」
と、彼は新幹線のホームまで迎えに来てくれて笑いました。
どうして、交際が始まってもう1年以上が過ぎているのにこの瞬間だけは、赤面してしまうほどに恥ずかしい気持ちになるのだろう・・・
なんて考えていました。
私は笑顔を作って彼に言葉を掛けました。
私たちは遠距離恋愛をしていました。
もちろん、寂しいと感じることも沢山ありますがこうして会った瞬間にそんな気持ちなど全て吹き飛んでしまうんです。
2人の関係は、友達感覚のカップルといった雰囲気だったのですがここ最近ではそれも随分と様変わりしました。
お互いが、愛情表現を‘これでもか‘と言うくらいにし合うようになっていましたし言葉の量だけ、愛情も深く抱いている証拠なんだと思うようになって居ました。
意図的に言葉を使っていこうといつからか思うようになっていた私。
彼も同じでした。
それは良いことなのかもしれませんが、私たちの場合は不自然さを呼び寄せてしまったのです(汗)
お互いの関係性に不自然さをそれぞれが気づくようになった時、もう前のようには戻ることが出来ないことも気がつきました。
一緒に居ると疲れてしまう。
そんな感情を抱くようになり、彼の住む町へも行かなくなってしまいました。
そうして、私たちの関係に終止符が打たれたのです。